哀しみの音色
 
彼といれば、あたしは間違いなく
彼に蓮を重ねてしまうだろう……。

そう確信した。


だからもう、今度こそ会いたくなかった。

これ以上会ったら、あたしは取り返しのつかないことになってしまいそうだったから……。


それなのに……


(………いた…)


彼はあたしに会いに来る。


神様は皮肉だ。

会いたくないのに、彼はあたしに惹かれていく。

突き放せば突き放すほど、彼はあたしに構ってくる。


そして……


(莉桜……

 俺、お前のこと、好きになってるかも……)


一番聞きたくて
一番聞いてはいけない言葉を聞いてしまった。
 
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