哀しみの音色
 
相沢樹に歌を聞かれ、彼の感想は


(すごく哀しい声だ……)


その言葉。


まるで蓮に言われた気分だった。


あたしにはもう、哀しく歌うことしか出来ない。
あの時のように、笑って歌うなんて出来ない。


蓮がいないと……。


たった一度だけ…
一度だけでいいから、もう一度蓮を感じたかった。


だからあたしは相沢樹に……



(名前……呼んでくれないかな……)



もう叶うことのないお願いをした。


戸惑いながらも彼は口を開く。
そして……


(………莉桜…)


もうこのまま…

消えてなくなればいいと、心の底から思った。
 
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