哀しみの音色
 
樹は蓮の苦手な高いところも絶叫系も好きで……
ブラックしか飲まないコーヒーを、砂糖もミルクも入れて飲む。

いつもあたしを振り回していた蓮。
だけど樹は、いつもあたしに振り回される。


大人ぶったところや、妙に背伸びしようとするところ。
だけど急に見せる男の顔。


一つ一つの仕草は、蓮とはまったく違っていた。


そしてあたしは……



そんな樹に、どんどん惹かれていった。



(付き合おっか)



その言葉は、蓮に似ていたから言ったんじゃない。

今目の前にいる樹に、少しずつ惹かれ始めていったからなんだ。



あたしが蓮と樹を別の人として見るのに
時間はそんなにかからなかったんだよ。
 
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