哀しみの音色
 
「いるかな……」


あれからまるまる1週間経ち、俺はいつものようにバイトから遅くに帰っていた。

遅番の日はいつもあの公園を覗いているが、あれ以来彼女を見ることはない。

だけど今日は、同じ曜日だということもあって、彼女がいるんじゃないかと少し期待していた。


そして踏み入れたその先に……


「………いた…」


ジャングルジムの上に、ただ座って夜空を見上げる彼女がいた。


今日は歌っていないらしい。

俺は声をかけるべきか悩んで、少しずつ彼女に近づいていった。


そして残り数メートルになった時……


「また来たの?」


彼女は振り向きもせず、そう投げかけた。
 
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