何度でもまたあなたに恋をする
一目惚れした相手は卒論でずっと通い詰めてた喫茶店で偶然見かけたスーツのサラリーマン。身長は高く、モデルのようなスラッとした体型。目鼻立ちははっきりしていてキリっとした目に惹かれた。
更に大学では見かけることのない携帯を片手に黙々と仕事しているところやコーヒーを飲みながら一息してる大人の姿にグッと心を奪われた。


そんなあの人が偶然、お姉ちゃんとあの喫茶店に現れたときは心臓が止まりそうかと思った。お姉ちゃんとどんな関係か気になって卒論をそっちのけで聞き耳を立てていたけれど全然聞こえない。でも、お姉ちゃんは結婚しているし、お義兄さんとはラブラブだからさすがに恋のお相手ではないことだけはすぐに分かった。


「ねぇ、今日喫茶店の『リリアン』で会ってた人、誰?」


気になって、気になって今日行ってもいい?とメールを送りその日の夜、お義兄さんの帰宅前に新居にお邪魔して一目散に問い詰めた。すると今度の派遣元の社員さんだという。だからあたしはいても立ってもいられなくてそんなお願いをした。あたしには残された時間がわずかしかないから。


「お姉ちゃん、あたしどうしても卒業前にいい思い出が欲しいの。大学でも結局好きな人は出来なかった。今まで本当にドキドキしたのは一度だけ。でも、あの人にはなぜか本当に惹かれたの。一目惚れだけどあの人となら最後にいい思い出になると思う」


あたしの決死の姿におねぇは渋々首を縦に振ってくれた。バレたらお姉ちゃんの信用も何もかもが崩れて終わる。だけどもう覚悟は決めた。そのリスクを背負ってあたしはお姉ちゃん、宮崎凛になるって。
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