Kitty love
天然女とジャージ男
生徒たちでざわつく、放課後の廊下。途中ですれ違う知り合いに声をかけたりかけられたりしつつ、俺はひとりで生徒玄関へと向かっていた。

今日は特に約束もないし、寄り道したいところもない。はやめに家に帰ってのんびりするか、なんて思いながら、足を動かす。



「──、──から、───よ」

「(ん……?)」



ちょうど2階から1階へおりている階段の途中で、階下から聞き覚えのある声がすることに気づいた。

それは足を進めるごとに鮮明になっていって、数秒後にはその声の主をはっきりと特定できるまでになる。



「(……アイツじゃん)」



そう思って頭の中に浮かんだのは、ここ最近毎日のように見ている、あの気の抜けるようなふにゃりとした笑顔。

けれどすぐに俺は、聞こえているのがアイツひとりの声だけじゃないことに気づいて。

そしてそのまま、階段下の角をまがった瞬間──自分の目に飛び込んできた光景に、俺は思わず足を止めた。

視線の先、15mほどの廊下に立っているのは、先ほど予想した通りの天然女と……ジャージ姿の、自分の知らない男。
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