Kitty love
立ち止まった俺のところに、ふたりの楽しげな声が届く。



「いやー、でも今日のアレはありえないっしょ。授業中爆睡してたと思ったら、先生に当てられた瞬間『わっ、私はゴマ味がいいと思います!!』……ぶはっ、なんだよそれだんごか!! もしくはプリンか!!」

「だっ、だから覚えてないって言ってるでしょー!! も~慧くんの意地悪っ!!」

「くくくっ、あーはいはい、かわいい奴め」

「うぅ~、慧くんはまたそーやって子供扱いする~」



やわらかく向けられるまなざし、宥めるように頭を撫でる手。不満を言いながらも、どこかうれしそうにはにかむアイツ。



《あのコかわいくてなにげに人気あるんだし、うかうかしてるとそのうちどっかのイケメンくんにとられちゃうぞ~》



そのとき不意に、頭のどこかで横山に言われた言葉が思い出されて。……俺の中の何かがぷつりと、切れた気がした。

勝手に自分の足を動かさせる衝動の名前なんて、今はどうでもいい。


──さわんな、見んな、今すぐ離れろ。


そんな感情が身体の奥から次々とわきでてきて、ただ、とにかく、今自分の目に映る光景が……気にくわない。
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