Kitty love
「……つーかおまえ、なんであの女のこと『ケイくん』とか呼んでたんだよ。『くん』っていうと、普通男だと思うだろ」



そうだ、思えばこいつの『ケイくん』呼びがあったから、余計に話がややこしくなったというのも事実だろう。

俺が顔をしかめて訊ねると、天然女はバツが悪そうに口を開いた。



「う、それは……初めて慧くんと会ったときに、慧くんジャージ着てて……だからあたしも男の子って勘違いしちゃったんです。その後すぐ女の子だってわかったんですけど、慧くんがおもしろがって“くん付け”のままでいいって」

「……わかった。どっちにしろ元凶はあいつなんだな」



見た目で勝手に勘違いをしたことは棚に上げ、不機嫌な顔で納得する。

すると腕の中の彼女が、思い出したように口を開いた。



「でもせんぱい、たしか前にせんぱいが自販機のとこで声かけてくれたとき、となりに慧くんいましたよ? しかもちゃんと制服のスカートで」

「え?!」



自販機のとこで、って、横山とふたりでいるときに会ったときのことだよな。

ってことはつまり俺は、あのときにはすでにこいつしか見えてなかったってことか……?

……いや。もしかしたらきっと、それよりも前からだったのかもしれないけど。
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