恋人たちのパンドラ【完】
(ちょっと時間かかっちゃったな)

そう思い買った本を抱えてカフェに向かうと、窓際の席で外を眺めている壮介を見つけた。

離れた席に座る女の子たちがこそこそと壮介をみてキャッキャと盛り上がっている。

(あぁ、あの席に行くの勇気がいるな)

そう戸惑っていると徐にこちらに向いて満面の笑みを浮かべて手を振ってきた。

なんとなくその行動が恥ずかしくて、顔の温度が上がるのがわかった。そしてさっきまで壮介に向いていた視線がこちらに向けられるのが分かりますます顔が赤くなった。

悠里は自分への視線がいたたまれないと思いつつ、壮介が待つ席へと向かった。

席に着くと、オーダーを取りに来た店員さんにロイヤルミルクティを注文して一息ついた。

「探してた本あった?」

本屋さんの紙袋を指差して壮介が聞くと同時に、その本を渡してくれと、手を出してきた。

そのまま壮介に袋を渡すと、壮介はすぐに中身をちらりと見た
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