恋人たちのパンドラ【完】
「まぁ、ノックもしないで。育ちの卑しさはいつまでたっても隠せないわね」

美津子は汚いものを目に入れてしまったような不快感をあらわにした表情をみせた。

(そんなに嫌なら、よびださなきゃいいのに・・・)

そうは思うも、ここで何か言おうものならば話は長引くのは予想ができたので黙って促されるまま席に着いた。

目の前に座るのは碓井 美津子【うすい みつこ】壮介の母親である。母親と言っても血のつながりはない。

壮介は父親の愛人とされる女の子供で、小学校3年生まではその母親とひっそりと暮らしていた。

その母親は不慮の事故でこの世を去り、その後跡継ぎのない碓井家にひきとられたのだった。
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