恋人たちのパンドラ【完】
脱力している壮介の腕を仁がつかみ立ち上がらせる。

「ここ最近悠里と連絡は取ってない。だから今の状況は全く把握できていないんだ。ただ、悠里がいなくなったということは9年前と同じくらいのことがあったんだと思う。アイツは小さい頃から何かると一人で抱えてそして逃げるんだ」

そう悲しそうな目で仁はつぶやく。

「その原因がお前だとしたら、俺はお前を許さない。そして今の状況でお前のために何かしようとは到底思えない。他を当たってくれ」

そう冷たく言い放ち、白衣を翻して行こうとした。

「待ってください。悠里の―――悠里のおなかの中には俺の子がいるかもしれないんです!」

壮介の悲痛な叫びが仁の耳に届き、振り向いた顔は驚いていた。
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