恋人たちのパンドラ【完】
食事を終えて、悠里は車をまわしてくるという壮介を店の前で待っていた。

肌寒い10月の夜風が今日の悠里にはとても心地よかった。

ここで待っていると壮介が迎えに来てくれる。そう思うだけで悠里の頬は緩む。

壮介の運転する、青い車が悠里の前に停車する。

壮介はわざわざ車からおりて、助手席のドアを開けると悠里をゆっくりと助手席に座らせた。

「おなか苦しいかもだけど、シートベルトして」

そう声をかけると、運転席へと戻り一度悠里の顔を見た後、車をゆっくり発進させた。

「あの、今日お兄ちゃんがホテルとってくれていて―――」

「キャンセルした」

悠里がすべて伝え終わる前に答えが帰って来た。
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