恋人たちのパンドラ【完】

「キャンセル？」

「そう、お前は今日俺の部屋に泊まる、そう簡単に逃げられてたまるか」

前を向いたまま有無を言わさない態度に驚くが、

「逃げるって・・・こんなに幸せなのにどうして逃げなきゃいけないの？」

悠里は言った途端熱で耳が熱くなるのを感じた。でもどうしても今の気持ち
を壮介に伝えたかったのだ。

悠里の言葉に壮介は運転中にも関わらず、真っ赤な顔をして悠里を驚いた顔でみつめていた。

「そ、そういうこと運転中に言うな。死ぬぞ！」

照れ隠しなのかいささか乱暴な言葉遣いだったが、壮介の気持ちは伝わってきた。

車の中は二人の体温の上昇でいっきに温度が上がった。

悠里はそっと助手席の窓を少し開けて、冷たい空気を頬に感じながら、運転中の壮介の顔をじっと盗み見ていた。