家族
 洋平の写真を見つめながら、貞夫は再びやるせない気持ちになっていた。この気持ちの正体は未だに分からない。
 洋平が憎く、この写真だって何度投げ飛ばそうと思ったか知れない。しかし、結局一度たりともそうは出来なかった。
 茜の死後、洋平の大きかった背中は見る影もなく小さくなり、死を迎える瞬間まで、彼は実に哀れな人生を送った。
 貞夫は突然立ち上がると、逃げるように自室へと向かった。

< 18 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop