月と太陽
 美月は、だんだんと、自分の部屋にこもるようになった。食事とお風呂に入るとき以外は、1階に降りてくることはなくなった。
 自分の家で、自分の居場所をなくした彼女に助け舟を出したのは、兄の雅樹だった。

 当時、英明大学の医学部を卒業し、既に研修医として、付属病院に勤めていた兄は、美月に、英明大学付属高等学校を受験するように言った。

「美月。英明の高等部に行くんだ。そして、高校生になったら、俺と一緒にこの家を出て二人で暮そう」

 兄のその言葉が、美月には、神の言葉に聞こえた。その日から、美月は、一心不乱に勉強し、その年の春、英明大学付属高等学校への進学が決定した。
 
 美月の高校が決まった日の夜、雅樹は、父に、4月からは、美月と家を出て、学校の近くにマンションを借りて暮したいと告げた。
 父の答えは、あまりに素っ気ないものだった。雅樹と美月が家を出ることを許可し、まだ、雅樹は研修医で収入も少ないだろうから、2人で暮すに足りるだけの仕送りをすることを約束したのだった。
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