かえるのおじさま
指先の震えがとまった。
美也子は顔をあげて少女を見る。

「ギャリエスは、ギャロが自分のおじさんだって知っているのね」

少女は大きく、こっくりと頷く。

「おばあちゃんが良く自慢してた。ものすごく有名な道化師なんだって」

「おばあちゃん……が?」

もちろん、ギャロの母親のことだ。

「もう一度会いたいって、良く言ってた」

あの自伝の中でギャロに無情の仕打ちを与えた姿と重ならない。

だが座長は「全て本当の話」だと言っていた。

ならば、どこかに誤解があるのだ。

死んだ人間はいいわけをすることができない。
だからこそ、伯父と姪として二人を引き合わせたいと、美也子は思った。

「ギャリエスは、伯父ちゃんに会いたい?」

「うん。それに、おばあちゃんから預かったものがあるの」

形見だろうか。
ならばなおのこと、母親から捨て去られたわけではないのだと、彼は知るべきだ。

「もう少し詳しく、おばあちゃんの話を聞いてもいい?」

「いいよ」

笑顔とともにくるりと動く目玉の動きは、本当にギャロにそっくりだった。
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