かえるのおじさま
それでもギャロは美也子の意見をないがしろにしたわけではない。

むしろ素晴らしい考えだと賛同し、最初の一本をとらせやすいように工夫をこらした。

飾り台一つとっても実際に作ったのは三台。
その中から実際に輪を投げて選び出し、位置や角度も散々に調整した代物だ。

「心配するな。アイディアは悪くないんだ。あとは客しだいさ」

ギャロが美也子の髪に触れようとしたそのとき、いのしし頭の親子連れが店先にあらわれた。
小さな女の子を抱いた父親だ。

「へえ、最近は女の子向けの景品なんかも置くんだねえ」

父親が目を留めたのは、もちろん、飾り台にさがったネックレス。

小さな女の子が声をあげる。

「ぱぱ、あれ、とって」

「よしよし。おう、おやじ、あれは木の枝にひっかければいいのか?」

願ってもない展開だ。
小さな子供でも狙えるように調整したのだから、オトナならなおのこと、簡単だろう。

それに、ちょっとした手心を加えてやってもいい。それはルールとは別問題の、サービスってやつだ……。
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