かえるのおじさま
少し離れて細工物をしながら見守っていたギャロから、ふうっと大きな笑息が漏れる。

「何やってんだよ、全く」

その肩を後ろからネルが叩いた。

「いやいやいや、いいねえ……新婚って感じで」

「バカ言うな。まだ婚約しただけだ」

「祝言はいつにする?」

「だから、俺の話を聞け」

夕食を煮る大鍋を抱えた猪頭の婦人が通りかかる。
彼女はギャロの言葉を聞きとがめた。

「だめだよ。せめて仮祝言だけでもあげなきゃ」

「そういう面倒くさいのはいらん」

「何が面倒くさいんだい! これだから男ってのは」

その罵声に手の空いているものたちが集まった。
両生類頭の座長は、ずいとギャロに詰め寄る。

「何の騒ぎだい」

「別に。個人的なことだ。あんたには関係ない」

ぷいと横を向いたギャロに代わって、カタツムリ頭が口を開いた。

「聞いてくださいよ。こいつ、祝言もあげないつもりですよ」

「別にあげないとは言ってないだろう。ただ、まだ早いと言っているんだ。俺たちはこれからゆっくりとお互いを知り合っていこうと、だな……」

両生類特有の、ぷにっとした指がギャロの頭をぐいっと掴む。

「あんた、ゆっくりとなんて余裕のある年かい?」

「だから逆にだな、ミャーコみたいに若い娘を一時の感情だけで縛り付けるわけには……痛てて、痛いって」

「痛いようにしてやってるんだよ。そういうケジメもつけられない、だらしない男に育てたつもりは無いよ!」
< 36 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop