かえるのおじさま
「ああ、安心したよ。あんたもついに、か」

「ついに、なんだよ」

「いいから、さっさとあいてる席に座りな。今日はおごりだ」

「おごってもらう云われはない」

「可愛い息子が彼女を連れてきたんだ。祝ってあげたいんだよ」

「おばさん!!」

気安いやり取りを美也子はいぶかしむ。

彼は売られた子供だと、あの本には書いてあった。
ならば彼を売った母親がどこかで暮らしていてもおかしくはないのだから……

「違うぞ、別に本当に血縁のある叔母ってわけじゃない」

ギャロのような蛙頭の濡肌種は珍しいものではない。

ここに来る前の町でも普通に見かけた。
人工の5分の1を占めるとも言われる、ひどくポピュラーな種族だ。

血縁がなくてもおかしくはなかろう。

「それに、ちっとも似てないだろう? あたしは美人で有名だからねえ」

「よく言うよ」

本当に美人なのかもしれない。

その婦人は目の間が程よく詰まり気味で、鼻先までがすうっとなだらかな弧を描いている。
< 64 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop