かえるのおじさま
「まずは腹ごしらえだ」

店の中は何もかもが古いが、決して不潔なわけではない。

艶がなくなるほど擦り切れた床にはチリ一つ落ちてないし、数え切れないほどの客を座らせてきたであろう椅子は、逆に年月による磨きがかかって、座面の木がてかてかと光っている。

だから、ギャロの言葉は店の女将に対するからかいだろう。

「こんな汚い店だけど、味は確かなんだ。この村で興行のときは、いつもここに来る」

はたして、前掛けで手を拭きながら出て来た蛙頭の女は、すこぶる愛想のいい声で切り返す。

「汚い店は余計だよ!」

ギャロの隣に立つ美也子に目を留めたその女は、前掛けで拭う手元も止めた。

「あれ、めずらしいねえ」

「ああ、醜怪種だからな」

「そうじゃないよ。あんたが女連れで、しかもそんなに大事そうに……ねえ?」

彼女の目線は二人の手元に注がれている。

ギャロはそのとき初めて、肩を引き寄せるほど強く手をつないでしまっていることに気づいた。

「や、これは……その……」
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