水没ワンダーランド
「ぜーんぜん帰ってこなーいから心配しちゃった」
でも、全然、普通の猫じゃない。
頭部だけが、遊園地にいる猫の着ぐるみでできている。
と言っても、目として取り付けられている四つ穴のボタンが互い違いになっていたり。
皮膚移植のように、右耳付近だけ布の色が違っていたり。
頬まで裂けている口は上下に開かないように、乱雑かつ豪快に糸で縫いとめられていたり。
ところどころ綿を吐いていたり糸が飛び出ていたり。
とにかく不気味だった。
こんな猫を遊園地で見たならば、大半の子どもはトラウマになるだろう。
しかし、首から下は普通の人間のようだった。
不気味な猫の着ぐるみの頭部をかぶり、首の辺りを荒縄で巻きつけ固定している。
しかしそれより下は赤いTシャツとGパンというラフな服装だった。
ヒラヒラと振る手も伸ばしている足も肌色で、人間のものだ。