水没ワンダーランド
「……わッ…!?」
体が一瞬宙に浮く感覚がしたと思うと、強い力で体ごと引っ張られる。
背中全体に衝撃が伝わる。
どうやら、小さな雑木林に引っ張りこまれ木の幹に押し付けられたらしい。
那智が声をあげようとする前に、那智の口元に大きな手が当てがわれた。
息が、できない。
足をバタつかせてもがいてみるも、口を抑える手の力は意外に強く、外せない。
しばらくしてヒュッと風をきる音と、凄まじい異臭がよぎった。
那智が押し付けられている木のすぐ横を、あの骸骨ケンタウロスが通りすぎた。
むき出しになった脳みそからひどい腐乱臭がする。
匂いが鼻孔にこびりつき、那智は吐きそうになる。
(俺は木だ、木だ、木だ!学園祭の木の役だ!)
余計に息苦しさが増したが、なんとか物音を立てないようにこらえた。
息苦しさが限界に達したころ、ついに諦めたらしく骸骨ケンタウロスが去っていった。
同時に那智の口元を覆っていた手も外れる。