水没ワンダーランド
「ない!今のはない!!アレはない!!」


「な、ないと言いつつなぜ走っているんですか!?」


丘をものすごい勢いで下り、那智たちは走る。
とにかく、骸骨ケンタウロスから一刻も早く遠ざかるために。


「なんなんだよ!あんなグロいもんがいるなんて、聞いてねえぞ!」


「だから!!何を見たんですか?」


「下半身が馬で、上半身が……」


那智が言いかけたとき、那智の耳に不吉な音が聞こえた。



パカラッパカラッ、という軽快な音。



それは、馬のひづめの音だった。
音を聞きつけた女の子が、振り向く。



すぐそこまで迫ってきている、上半身が人骨で下半身が馬のバケモノと目が合った。



「……ッ……!?」



女の子は声にならない悲鳴をあげた。


「な、ななな……ななっ…!?」


その間にも、骸骨ケンタウロスもの凄いスピードで那智たちとの距離を確実に埋めてくる。

速さだけは普通の馬と大差ないようだった。


「このままじゃ追いつかれますよ!?」


「なんで俺たちが狙われてんだよ?!」


那智が半泣きになりながら、やめておけばいいものの、また後ろを振り向いた。

さきほどよりも確実に骸骨ケンタウロスは近づいてきている。



しかも、近くなったことでそのグロテスクな姿がより鮮明に那智の目に映った。


骸骨の頭らしき部分から、とてつもなく肌触りの悪そうなピンク色のビチャビチャした半液体の物体がはみ出ている。


(……の…のうみそ…!?)


「怖ェェエェ!!!すっげえ怖ェ!!何あれ!?何あれ!」


「那智さん、ここは二手に別れましょう!私がこっちで那智さんはこっち……ア、アレ?」


「どっちもおんなじ方向だろーが!」


もう、だめだ、と那智が諦めた瞬間。グイと首根っこを引っ張られるような衝撃が首元に走った。


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