水没ワンダーランド
「僕はずっと那智たちを探してたよー?けど、あんな高いところから落ちちゃったから、僕だけ跳ねて遠くに行っちゃったんだよー」


「……」


皮膚としての手ごたえが全く無いチェシャ猫の頬をつねり上げながら那智は、さてどこからツッコミをいれようかと考え込んでいた。



跳ねる?


あんな高いところから落ちて、地面に叩きつけられて、あげくの果てに遠くまで跳ねる?


那智がなぜ無傷で済んだのかも大きな謎だったが、それよりも今は、綿でも詰め込んであるらしき頭をボンボン地面に叩きつけながら跳ねて転がってゆくチェシャ猫を想像して「絶対にこの世のものじゃないな」と今一度確信した。



実際に、此処はもう「この世のもの」ではないのだけれど。



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