水没ワンダーランド
「まあ、こんにちわ!」
「……え!?」
ドアを開けた途端に弾けるような陽気な女の声と、
思ったよりも明るい部屋の照明にスージーの肩がビクリと震える。
「あらあら、迷子ですか?」
事務用の机と椅子だけを置いた簡素な部屋には、女がいた。
漆黒のワンピースを着て、その上に白のエプロンをつけたいかにもメイド風な彼女が、笑顔で首をかしげる。
この女の人といい、さっきのドードーといい。
なぜこんなにもこの屋敷の住人は愛想がいいのだろうか。
それも、気味が悪いほど。
「あ……あの!ごめんなさい、私たちこの間違えてこのお屋敷に来ちゃったんです!那智さんっていう男の人を探しているんですけど」
ドードー鳥のように丸め込まれる前に、スージーは一息で用件を言い切った。
すると、メイドは悲しそうに眉根を寄せて俯く。
「……お客様じゃ、ないんですか…」

