初恋
神崎結衣が乗ったタクシーが見えなくなると、瀧澤は「クソ!!」と下駄箱を殴った。

瀧澤の拳からは血が。


「あーあ。また保健室かよ。
俺、学校嫌いなの分かってんだろ?
いい加減にしろよ〜」

と、笹野が笑いながら言う。


瀧澤の泣き顔はあたしの記憶の中では初めて見た。
小さい頃から絶対泣かなかった瀧澤が、泣いているのを見て、あたしまで泣きそうになった。


14年も一緒にいるのに、そこにはあたしが知らない瀧澤がいた。



あたし達三人は再び保健室へ行った。
保健の先生は呆れて瀧澤を治療していた。

瀧澤は泣き続けていた。

「瀧澤、わりぃ。
俺、何も分かってなかったわ。」


笹野が、瀧澤にそう言ったが、瀧澤は俯いたままだった。




「ねぇ。一体何があったの?」




あたしたちの物語はここから始まる。




平凡でつまらない毎日に飽き飽きしていたあたしたち三人は、ガラリと変わった。

全て、神崎結衣のせいであり、神崎結衣のおかげだった。







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