初恋
---それから十年後。




あたし達三人は、お墓の前で手を合わせていた。




「あれから十年か。
はえーもんだな。」

笹野がお墓を見つめながら言った。



そして、瀧澤はお墓に話しかける。



結衣の名前が刻まれた、そのお墓に。





「結衣…。
お前がいなくなって2年。
忘れられるわけねーだろ。
やっと見つけたのに。
やっとお前を幸せにできるって思ったのに…。
忘れられねぇよ…忘れたくねぇよ…。」




瀧澤のその低く震えた声で、あたしの目からは涙が溢れた。

笹野がそんなあたしを強く抱き寄せる。





戻りたい。

でも、もう戻れない。

過去を受け止められないあたし達。
あたし達の時間はあの日から止まったまま。




「戻って来いよ、結衣…。」


瀧澤の声さえ、もう届かない。





結衣は死んだのだ。

二年前の五月十日。
結衣の二十二歳の誕生日だった。











ねぇ、結衣。


結衣といた日々は幸せで、毎日がキラキラしてた。

ー結衣ね、死んだらあの星みたいに輝けるかな?


そんなことを言っていた結衣。
結衣は輝いてたよ。
結衣の笑顔で幸せになれたよ。


だから、結衣。
どうかお願い。



戻ってきて。


あたしたちの青春をやり直そう。




あたしたち三人には、結衣がいなきゃだめだよ。



ねぇ、結衣、聞こえてる?









あたしは空を見上げた。

眩い星空が広がっていた。








ねぇ、結衣。






どこにいるの?



< 14 / 28 >

この作品をシェア

pagetop