あの日、言いたかったこと。

「……バカだ……」


悠斗が小さな声で呟いた。


「っ……俺達……バカだっ……。
アイツはいつも俺達のこと気にかけてくれてっ……ちゃんと理解してくれたっていうのに……。
俺達はアイツのこと……何にも分かってやれてなかった……!」


……悠斗の言う通りだ。

自分のことばかりで……光輝のことをちゃんと分かっていなかった……。


あんなに一緒にいたのに……。

ずっと……ずっと一緒にいたのにっ……!


「ごめんね……。
私がもっと早く君達に会っていれば……君達に話していれば、君達はこんなに苦しまなくて済んだのに……」

「おじさんは悪くないです……。
っ……バカだった俺達のせいです……」


バカでガキで……何にも分かっていなかった……。

現実から逃げてただ自分が傷つくのを恐れていた……。


「謝りたいっ……光輝に……。
っ……ごめんって……言いたいっ……」


……直接……そう言いたいのに……。

何で言わなかったんだろう……

あの日……試合が終わってすぐにでも言えばよかった……。

光輝が話しかけてきてくれた時にでも謝ればよかった……。

いつか謝ればいい。

その“いつか“が永遠に失われてしまうなんて……考えたこともなかった。


あの日あの時……伝えなきゃいけなかったんだ。

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