あの日、言いたかったこと。

「……俺、メチャクチャ喉乾いてるんだけど」

「俺だって運動したからすげぇ喉乾いてるし」

「いや、俺の方が」

「お前は何もしてねぇだろ」

「授業受けてましたー」

「どうせ聞いてないんだろ。
そんなんだから補習に引っかかるんだよ」

「聞いてるし。
先生の話、一言も聞き逃してねぇし」

「どうだか」


そう言いながらさりげなく悠斗が自販機に小銭を入れようとする。


「待てよ。
俺が先だってば」

「早く飲みてぇんだよ。
すぐ終わるからいいだろ」

「順番は守るのが当たり前だろ」

「お前、遅いんだよ」

「そうやって、お前は昔から……」


………って。


「………………」

「………………」


……何普通に話してるんだ、俺は。


「………ふっ」


悠斗は俺の顔を見て小さく笑った。


「ちょっ……何で笑ってんだよ」


そう言いながらも俺の顔は……笑顔だった。

< 38 / 133 >

この作品をシェア

pagetop