あの日、言いたかったこと。
……俺はゆっくり顔を上げて悠斗の顔を見た。
ムカつくぐらいに整った顔は……苦しそうに歪んでいた。
「……逃げちゃいけなかったんだよ。
初めから……。
……おばさんの死から……逃げちゃいけなかったんだ」
……俺達は逃げた。
光輝に合わせる顔がないとか言いながら……結局は逃げていた。
自分達のしたことが取り返しのつかないことだと分かっていながら……逃げた。
母親が亡くなって辛かったはずの光輝と……ちゃんと向き合おうとしなかった。
本当は俺達が光輝を支えなくちゃいけなかったんだ。
光輝は泣きたかったはず。
でも……それでも笑顔で俺達に話しかけてきた。
それなのに……俺達はそれを聞こえないフリをしてごまかした。
「もしあの時、俺達が逃げなかったら……光輝はまだ俺達の隣にいたはずなんだ」
光輝は靴ひもを結んでいた。
俺達はいつもならそれを待っていた。
もし、あの日……。
俺達が光輝を待っていたなら……。
何度そう考えただろう……。
今更考えたってどうにもならないって分かってるのに……。
考えずには……いられないんだ。