あの日、言いたかったこと。

「今思えば……あの頃の俺達って、都合が悪くなるとすぐ逃げてたな。
……今もだけど」


何も成長していない。

あんなことがあっても……結局、何も。


おばさんのことも……光輝のことも……杏のことも。


全部……全部、逃げている。

目をそらしている……。


「……覚えてるか?
アイツ、俺達が杏奈って呼ぶと怒るんだよ」


悠斗が小さな声でそう呟いた。


「あぁ……そういえばそうだったな。
杏って可愛く呼んでって……。
……でも、光輝だけは杏奈って普通に呼んでたよな。
杏も嫌がってる風じゃなかったし」

「……はぁ?」


俺がそう言うと、悠斗は呆れたような目で俺の方を見てきた。

そして、小さくため息をついた。


「気づいてなかったのかよ」

「え?」




「そんなの……アイツだけが特別だったからに決まってるだろうが」

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