あの日、言いたかったこと。
「特別って……。
杏が光輝のことを好きなのは知ってたけどさ……そういうもんなの?」
「そういうもんだろ。
他の男には同じ呼び方されたくなかったんだよ、きっと」
「そういうもんなのか……」
「お前、そういうのには疎いからな。
だからモテねぇんだよ」
「イケメンに言われるとマジでムカつく……」
確かに恋愛には疎いけど。
でも、まさか小学生だった杏がそんなことを考えていたとは……。
「けど……今はどうなんだろうな。
杏奈って呼んだら……怒んのかな」
俺が呟くと、悠斗はゆっくりと空を見上げた。
今日は綺麗な青空だった。
「……どうだろうな」
もし、今……杏に好きな人がいて、杏が幸せだったら。
それは俺としても嬉しい。
でも、もし……まだ、杏が光輝のことを忘れられずにいたならば……
その時……俺は杏に何をしてやれるんだろう。