あの日、言いたかったこと。

「特別って……。
杏が光輝のことを好きなのは知ってたけどさ……そういうもんなの?」

「そういうもんだろ。
他の男には同じ呼び方されたくなかったんだよ、きっと」

「そういうもんなのか……」

「お前、そういうのには疎いからな。
だからモテねぇんだよ」

「イケメンに言われるとマジでムカつく……」


確かに恋愛には疎いけど。

でも、まさか小学生だった杏がそんなことを考えていたとは……。


「けど……今はどうなんだろうな。
杏奈って呼んだら……怒んのかな」


俺が呟くと、悠斗はゆっくりと空を見上げた。

今日は綺麗な青空だった。


「……どうだろうな」


もし、今……杏に好きな人がいて、杏が幸せだったら。

それは俺としても嬉しい。


でも、もし……まだ、杏が光輝のことを忘れられずにいたならば……


その時……俺は杏に何をしてやれるんだろう。

< 50 / 133 >

この作品をシェア

pagetop