あの日、言いたかったこと。
俺と悠斗の間に会話はほぼなかった。
黙ったまま歩きながら……二人とも、時々何もない隙間に視線をやる。
通りすがる人々はそんな俺達を見て不思議そうな顔をする。
そりゃそうだろうな。
男子高校生が不自然に間を空けながら黙ったまま並んで歩いていて、しかも暗い顔をしていれば。
それでも俺達はそのまま歩いていく。
まるでその隙間に……誰かが来るのを待っているように。
そんな時だった。
「杏奈ちゃん、これもお願いね」
聞いたことのある声が聞こえてきた。
あぁ……あれはコンビニの店長だ。
俺はあそこの常連だからあの店長とは顔見知りだ。
そっか、もうコンビニがあるところまで来たのか。
声のした方に顔を向けると、店長と大きなゴミ袋を持った杏の姿が見えた。
「はい!
って……店長。
もー、言ってるじゃないですか。
あたしのことは苗字か杏って呼んでくださいって」
…………え……。
それを聞いた瞬間……俺と悠斗の足は止まった。
ただ目を見開きながら……杏の方を見つめていた。