あの日、言いたかったこと。

「何で……どうしてっ……」


しゃがみ込みながら……杏は涙を流した。


「……ごめん。
でも……杏の本当の気持ちを吐き出させたかった」


杏は……明らかに無理をしていたから。


「杏……お前、ずっとアイツのこと……」


悠斗がそう言うと、杏は涙を流しながら小さく頷いた。


「……そうだよ。
ずっと……ずっとっ……コウ君が忘れられないのっ……」


そう声を震わせながら言った……杏。

今も昔も……杏が想ってる人はただ一人だった。



そしてその人は……俺達の代わりに死んだ。

< 56 / 133 >

この作品をシェア

pagetop