社内恋愛のススメ



「今度、メシでもおごって。」


こういう言葉を言わなければ、最高なのに。


でも、知ってるよ。

その言葉でさえも、私が気を遣わない様に言っているだけなのだと。



面と向かっては言えないけれど、いつも感謝してるんだよ。


長友くんのさり気ない優しさに。

長友くんの言葉に。


長友くん、ありがとう。







「んー!」


朝、目が覚める。

背伸びをして、思いきり体を伸ばす。


ここ何日かは熱のせいで、ベッドに寝たきりだった私。

寝たきりだったせいで、体が鈍っているらしい。

背伸びをしただけで、体が簡単に悲鳴を上げるからおかしい。



でも、気分がいい。


自由に動く体。

軽くなった体が、体調が戻ったことを実感させてくれるから。



チュンチュン。


久しぶりにカーテンを開けてみれば、眩しい朝の光が差し込む。

それと同時に聞こえてくる、小鳥のさえずり。



あんなに酷かった頭痛も関節の痛みも、今はない。

悩んでいたのが嘘みたいに、スッキリしているのは何故だろう。


熱にうなされながらも、ずっと考えていたからだろうか。



上条さんのこと。

文香さんの存在。


私と上条さんの、これからのこと。

進むべき未来。



悩みが消えた訳じゃない。

状況だって、何も変わってはいない。


だけど、決めたから。

自分の気持ちは、もう決まっているから。



カチカチカチ。


着替えを素早く終えた私は、携帯電話を手にする。

慣れた手付きで、ボタンを押していく。



こう見えても、メールを打つのは早い方なのだ。

機械音痴でもない。


昨日考えていた通りに、私の手の中の携帯電話が、メールの文章を作り上げていく。



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