社内恋愛のススメ



「私、そんなに弱い女じゃないから。たくさん寝たから、めっちゃ元気だよ!」


わざとらしいくらいに明るく振る舞って、そう答える。



本当は、そんな明るい気分じゃないけれど。

今日の仕事が終わった後のことを考えると、とても気が重くなるけど。


それでも、笑っていたい。


私を心配してくれる長友くんの前では、笑っていたいんだ。

長友くんの前でいる時くらいは、嫌なことは忘れていたいから。



「今日の昼メシ、期待してるからな!」

「は?何のこと?」

「忘れてないよなー?メシおごってくれるんだろ。」


あの約束は、有効らしい。

長友くんにはいろいろお世話になっているから、何かをごちそうすることは構わないんだけどね。



「………なるべく、1000円以内でお願いします。」


そんなやり取りをしてから、私は自分のデスクに着いた。






私のデスクの、遥か向こう。


フロアでも目立つ位置にある上条さんのデスクは、嫌でも視界に入ってしまう。



(上条さん………。)


誰よりも、仕事に打ち込む人。

誰よりも早く出社して、1番最後まで残って仕事をしている人。


いつもの様に仕事に追われる上条さんとは、目も合わない。



(メール、読んでくれたかな?)


あのメールを見て、どう思っただろう。

何を考えだろう。



上条さん。

そのクールな表情の裏で、何を思っているの?


こんな時ですら、上条さんはいつも通り。

私は今でも、動揺したままだというのに。


上条さんと話す覚悟は決めたけれど、動揺していない訳じゃない。



あの日。


初めて、文香さんを見た日。

文香さんと会った日。


上条さんと文香さんが並ぶ姿を見てから、私の心は揺れ動いたままだ。



今日、全てが決まる。


私と上条さんの、これからのことが。



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