社内恋愛のススメ
恋人だなんて、甘い関係じゃなくなってしまう。
プライドが高いとは思っていない。
女を捨てて生きていた私だ。
だけど、それでも、欠片ほどのプライドがまだ残ってる。
ほんの少しだけでも、意地というものがあるのだ。
他人を不幸にしてまで、自分だけが幸せになりたいとは思えない。
やってしまったことは、自分にも返る。
付けてしまった傷は、必ず自分にも返ってくる。
他人の不幸は、自分までも不幸にするはずだから。
「………!」
私の言葉で、上条さんの鉄壁の表情が崩れていく。
クールな上条さんは、もうそこにはない。
歪んだ表情だけが、表へと滲む。
その表情を見て、私は不覚にも安堵してしまったんだ。
(あぁ、私………愛されてたんだ。)
気まぐれで、デートに誘われてた訳じゃなかった。
欲求不満を解消したいが為に、誘われていた訳じゃなかった。
私、愛されてた。
こんな私なのに、上条さんはきちんと愛していてくれていたんだ。
良かった。
良かった。
私の想いは届いていた。
こんな結果になってしまったことは、とても残念だけど。
悲しいことだけれど。
それでも、変わらない。
想いが通じ合っていたという事実は、これからも変わらない。
そう思ったら、張り詰めた糸が少しだけ緩んでいく気がした。