社内恋愛のススメ



恋人だなんて、甘い関係じゃなくなってしまう。



プライドが高いとは思っていない。

女を捨てて生きていた私だ。


だけど、それでも、欠片ほどのプライドがまだ残ってる。

ほんの少しだけでも、意地というものがあるのだ。



他人を不幸にしてまで、自分だけが幸せになりたいとは思えない。


やってしまったことは、自分にも返る。

付けてしまった傷は、必ず自分にも返ってくる。


他人の不幸は、自分までも不幸にするはずだから。



「………!」


私の言葉で、上条さんの鉄壁の表情が崩れていく。

クールな上条さんは、もうそこにはない。


歪んだ表情だけが、表へと滲む。

その表情を見て、私は不覚にも安堵してしまったんだ。



(あぁ、私………愛されてたんだ。)


気まぐれで、デートに誘われてた訳じゃなかった。

欲求不満を解消したいが為に、誘われていた訳じゃなかった。


私、愛されてた。

こんな私なのに、上条さんはきちんと愛していてくれていたんだ。



良かった。

良かった。


私の想いは届いていた。



こんな結果になってしまったことは、とても残念だけど。

悲しいことだけれど。


それでも、変わらない。

想いが通じ合っていたという事実は、これからも変わらない。



そう思ったら、張り詰めた糸が少しだけ緩んでいく気がした。



< 131 / 464 >

この作品をシェア

pagetop