社内恋愛のススメ
顔を合わせるのは、つらい。
上条さんの顔を見るだけで、泣きたくなる。
手放してしまったことを後悔しそうになる。
ギュッと胸が締め付けられて、苦しくなって。
切なくなって。
それでも、会社に行かなきゃいけない。
だって、私は社会人。
会社で働くことで、生活していくことが出来ている身。
自分の勝手な都合で、休めない。
周りの同僚にまで、迷惑はかけられない。
だったら、せめて、綺麗な自分を見せたかった。
いい女と付き合っていたんだなと、そう思ってもらいたい。
後悔しない恋だったと、そう思って欲しいから。
ちっぽけな私の、くだらないプライドだけど。
(バサバサ睫毛って、視界の邪魔だ………。)
視界の上が、確実に遮られている。
それに、目も疲れてしまう。
ノーメイクで仕事をするのが目には優しいのだろうけれど、そうもいかないのが悲しい。
「はぁ………。」
大きな溜め息をついた、その時だった。
「お疲れーーー。」
間延びした低い声が、真上から降ってくる。
コツン。
それとともに、頭に軽い衝撃。
固い物が、私の頭にぶつけられている。
上を向いた先にあったのは、長友くんの笑顔だった。