社内恋愛のススメ
「あ、長友くん。お疲れ!」
ちょっとだけ、疲れた笑顔。
私の隣にある自分のデスクに、ダラーンとだらしなく座る長友くん。
長友くんもまた、私と同じく残業中。
今日の残業組は、私と長友くんの2人だけ。
独身で、お互い恋人がいないフリーの身。
事情を知られているから、どうしても残業メンバーに選ばれやすいのだ。
世間は、花の金曜日。
1週間の仕事を終え、解放されている時間帯。
それなのに、私と長友くんは会社に縛り付けられて残業中。
悲しいかな、この状況。
いや、別に、他の人に変わってもらいたい訳ではないけど。
家庭がある人は、金曜日くらい家に早く帰りたいだろう。
恋人がいるなら、仕事から解放されて、デートをしたくなる日。
好きな人に会いたくなる気持ちは、私にだって痛いくらいに分かる。
好きで、別れた訳じゃない。
好きで、未婚を貫いている訳じゃない。
だから、こんな日は、理不尽なこの扱いを多少は恨みたくなるのだ。
「長友くん、帰ったのかと思ってた………。」
「は?何で??」
「だって、いきなりいなくなるんだもん。」
視線をパソコンに戻し、そう呟く。
10分ほど前、突然消えた長友くん。
さすがに疲れて帰ったのかと思っていたら、そういう訳ではなかったらしい。
呟いた私に、長友くんは呆れながらこう返した。
「バーカ。」
「な、な、な………バカって!」
「ほんと、バカ。お前だけ残して、俺が帰る訳ないだろ。アホか。」