社内恋愛のススメ



長友くんは、純粋に心配してる。

いつもとは様子が違う私のことを、心配してくれているんだ。


丁寧な言葉ではないけれど、長友くんの言葉には、長友くんの本当の心が見える。



同僚として。

そう、同僚の1人として。


モヤモヤする。

理由は分からない。


だけど、モヤモヤする。

霧が立ち込めた様に、霞んでいく。



私は、長友くんにとって、ただの同僚。

同期入社で、同い年で。


そんな人は、他にもいる。

私だけじゃない。


その他大勢の中の、1人。



そんな私にまで、気を遣うの?

こんなに気を遣ってくれるの?


結婚したい人がいるのに、どうして………。



「別に、いつもと変わらないって。」


あぁ、こんなことが言いたいんじゃない。


それなのに、心と体は真逆のことをする。

正反対のことばかり、口にする。



「会議室、行けばいいんでしょ?」


ありがとう。

心配してくれなくても、私なら平気だよ。


そう言いたいのに、素直に言えない。



出てくる言葉は、可愛くないものばかり。

私のことを心配する長友くんを、傷付けてしまう言葉ばかりだ。



強く引かれた腕を振り払う。


見てしまった。

見えてしまった。


一瞬だけ、悲しげに歪んだ長友くんの顔。

でも、それはほんの一瞬で。



「ほら、行くぞ。」


そう言って、先に歩き始まる長友くんの後ろに付いていく。


長友くんの広い背中を見つめながら、無言で歩いた。



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