社内恋愛のススメ



失敗なんてしたら、確実に何らかの処分が下る。

制裁があることを分かっているから、誰も手を挙げない。


怖いのだ。

失敗が許されないから、みんな、恐れているのだ。



(やってみたい………だけど。)


私の中の仕事の虫が疼き出す。


大きなプロジェクトに直接関われることなんて、滅多にない。

私みたいな平社員には、チャンスなんて巡ってこない。


やってみたい。

やってみたいけれど、自分にそんな力があるのだろうか。



失敗するのは、私だって怖い。

恐れていない訳じゃない。


でも、怯える気持ちよりも先に立つのは、好奇心。



自分の手で、大きなプロジェクトを成功に導きたい。

導いてみたい。


他人の様子を伺う、企画部のメンバー。


沈黙が漂う室内に、能天気なくらいに明るい声が響いた。



「はーい!」


子供みたいに元気に、手を挙げている人物が1名。


しかも、近い。

私の真横だ。


チラリと横に視線を送ると、ピーンと真っ直ぐに手を挙げている長友くんの姿が、視界の端に映り込んだ。



真っ白なワイシャツ。

首元で揺れる、水色のネクタイ。



「俺、やってみたいです!」


いつでも、真っ直ぐな長友くん。

前を見ている、長友くん。


長友くんは、長友くんだけは出会ったばかりの頃から変わらない。



「こんな大きなプロジェクト、次にいつ関われるかなんて分からないし。」


そう言う長友くんの目は、キラキラしてる。

星の煌めきよりも、輝いて見える。



仕事になると、目の色が変わる。

いつもはダラダラしていても、仕事のことになると別人みたいにシャキッとする。


そう、それは、長友くんの長所。



「うーむ………。」


唸る部長。


しかし、その心は決まっていた。



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