社内恋愛のススメ
(やりにくい………。)
私と長友くん。
そして、上条さん。
この3人が揃うと、非常に仕事がやりにくい。
プロジェクトに関することで話し合っていると、必ずと言っていいほど、上条さんが割って入ってくるのだ。
プロジェクトに関係のない世間話をしている時だって、上条さんの視線を感じない時はない。
いつも、見られてる。
長友くんと一緒にいる時だけは、特にそう感じる。
長友くんの隣にいると、上条さんの視線を感じずにはいられないのだ。
警察にでも、捕まっているみたい。
上条さんの視線。
その視線に意味があっても、なくても、やりにくいことに変わりはない。
監視されている環境の中で、いいアイデアなんか浮かばない。
息が詰まる。
苦しくて、脳にまで酸素が行き届かなくて。
監視されている様な錯覚と、アイデアが一向に浮かばない状況。
思わず降参しそうになった、その時だった。
「主任、俺、ちょっと外に出て来ます!」
隣に座る長友くんが、そう言って席を立つ。
スッと、釣られて立った上条さんが、その理由を問い質した。
「どうしてだ?今は、仕事中のはずだ。プロジェクトの担当者である君に、そんな時間はないだろう?」
上条さんの低い声。
いつもに増してひんやりと冷たさを孕んだ声が、会議室にこだまする。
主任としては、当たり前の叱責だ。
上条さんの本気の怒りは、慣れていても思わず怯えてしまうほど怖い。
貫禄があって、そこに威厳も加わるから余計に。
そんな上条さんの怒りに屈せず、軽く笑みさえ浮かべる長友くん。
もっともらしい理由を付け、長友くんはこう言ってのけた。