社内恋愛のススメ



日に焼けた肌は、褐色。



真っ直ぐに前を見る、2つの瞳。

ただ前だけを見ている、真剣な目。


よそ見をされても、それはそれで困ってしまうけれど。



いつもとは異なる状況。

会社のデスクよりも近い、お互いの距離。


加えて、この空間。

他には誰もいない、完全なる密室。


動いているというだけで、密室ということに変わりはない。



ドクンッと、跳ねる心臓。



意識したくない。

それでも、意識してしまう。


意識したくなくても、自然に長友くんに視線が向かう。


嫌だ。

嫌だ。


こんな自分、認めたくない。

それなのに、認めたくないと思えば思うほど、この心音は大きくなっていく。


本当に、皮肉だ。



「あんま、こっち見んなよ。」


プッと笑いながら、長友くんがそう言う。

きっと場を和ませたくて、言った一言。


狭い車内で、2人きり。


ここにいるのは、私と長友くんだけだ。

他に話す人なんて、いやしない。



「み、見てない!」

「いーや、見てた。絶対、俺のこと見てたね。」

「見てないって、全然。長友くんのことなんか見てないから。」

「運転してる俺って、そんなに格好いい?」

「………うーわ、キモい。長友くん、気持ち悪い!」


「惚れんなよ。」

「どこの口が、そんなこと言うのかな………。」

「ほら、泣いちゃう女、いるかもしれないし。」

「あー、はいはい。どうでもいいから、前見てて。」



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