社内恋愛のススメ



(これって、助手席に乗れって言いたいのか?)


そう思って首を傾げた瞬間、私の体は簡単に車の中に押し込まれた。



「い、痛………!何するの!?」

「お、ちゃんと乗ったな?」


まんまと車に乗せられてしまった私を横目で確認してから、長友くんが運転席にサッと座る。



ブォーー……


鍵を回せば、エンジン音。

始動したエンジンが、低く唸る。


グッとアクセルを踏み込んだ長友くんは、軽いハンドリングで車を発進させたのだった。







会社のあるオフィス街を抜ければ、渋滞に巻き込まれることもない。


鬱陶しい渋滞。

それも、私が車の運転から遠ざかっている一因なのかもしれない。



運転席で、ハンドルを握る長友くん。

そのすぐ隣で、長友くんを見つめる私。


窓の外の景色よりも、長友くんの姿に目がいく。



(運転してる長友くんって、初めて見る………。)


それも、当たり前。

だって、長友くんが免許を持っていることを知ったのは、ほんの1時間前。


私は知らない。

こんな長友くん、知らない。



付き合いが長いと言っても、それは会社の中だけでのこと。

会社を出てしまえば、長友くんのことで知っていることは、そう多くはない。


会社での長友くんしか知らないから、新鮮に感じるのだ。


ハンドルを握る、長友くんが。



スーツのジャケットは、さっき自分で後部座席に放り投げていた。


今の長友くんは、上半身はワイシャツと緩く結んだネクタイだけ。

ワイシャツの袖口を捲り上げて、長友くんは運転してる。



ワイシャツから伸びる、筋肉質な腕。

私みたいに、プヨプヨしてない。


女の子じゃない。

男の人の、太い腕。



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