社内恋愛のススメ



「ど、同情とか、いらない………。」

「誰が、そんなこと言った?」


やっと出てきた言葉は、その腕の中から抜け出す為の言葉。



長友くんの行動の意味が分からない。

長友くんの言葉の意味が分からない。


だから、戸惑ってしまう。

どうしたって、戸惑ってしまうんだよ。



長友くんの腕の中を抜け出そうと、足掻く私。

そんな私に、長友くんはこう囁いた。



「同情なんかで、上司に逆らってまで助けない。俺、そこまでいいヤツじゃないから………。」


そんなことをするのは面倒臭いって言いながら、私を強く抱き締める。

より一層、強く。



「俺が結婚したいのは、お前。俺が好きなのは、お前。俺、有沢のことが………好きなんだよ。」


長友くんが囁いた、愛を伝える言葉。

その言葉は、私の心と深く共鳴して響いた。


共鳴した心が震える。

重なり合う心が、同じ色に染まっていく。







いつも、長友くんは傍にいた。


同い年で、同期入社で。

デスクは、入社当時からずっと隣。




だけど、それでも、きっと心は遠かった。

近い様に見えて、遠かった心。


仲は良かったけど、それはあくまで同僚の1人として。



遠かった心の距離が、今、なくなる。


0になる。




「お前が好きだ………。」


ロマンチックではない場所で、長友くんは自分の気持ちを紡いでいく。

不器用で、でも真っ直ぐな言葉。


長友くんの言葉はそのまま、私の心を強く撃ち抜いて。

私は嗚咽を漏らしながら、その言葉に耳を傾けていた。



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