社内恋愛のススメ
『彼の魔法』



2度目のキスは、給湯室。


色気もない。

ロマンチックでもない場所。



そんな場所で交わしたキスは、それでも十分過ぎるほどに甘くて。


スッと触れただけで、溶けてしまいそう。

その部分から、蕩けてしまいそう。


この前と同じく、ほんの一瞬触れ合っただけなのに。








2度目のキスに、2度目の長友くんの部屋。

掃除されてない部屋は、相も変わらず散らかっている。


とりあえず、本が山積みになっているだけで、後の部分はそこそこ片付けられているみたいだけど。



ドンッと押されて、押し込まれるみたいにして、部屋の中に入れられる私。


よろけて思わず転びそうになった私を支えてくれたのは、長友くんの筋肉質な太い腕。

褐色の腕が、私を捕らえる。



「い、痛い………。」


抵抗も虚しく、私の体は簡単に長友くんの腕の中だ。


強引で。

人のことなんか、お構いなしで。


でも、嫌じゃない。

その強引さに惹かれている自分がいる。



知ってるから。

私は知っているから。


その強引さの中にある、長友くんの優しさを。



「なぁ、有沢。」

「な、に?」

「俺、返事聞いてないんだけど。」

「返事………?」


しっとりと、汗が滲む。



返事って、何のこと?

そう交わせたら、どんなに楽だろう。


胸が痛い。

張り裂けそうなほどに、高鳴ってる。



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