社内恋愛のススメ
キラキラ光る、シルバーリング。
小さな透明の石が、ど真ん中に1つだけ。
透明なその石が、朝日に反射して眩しく煌めく。
「何って、指輪だって。見て、分からない?」
「いや、指輪なのは分かるけど………どうして?」
誰がとは、聞かなくても分かる。
昨日の今日で、こんなことを出来る人物は1人しかいない。
昨日の夜から、ずっと私と一緒にいた人。
果てて隣で寝てしまって、私が目覚めるよりも少し前に目を開けていた人。
同じシーツにくるまりながら、私の隣に寝転ぶこの男以外、考えられない。
私の反応に満足しているのか、長友くんは嬉しそうに目を細める。
焦げ茶色の目の奥が、柔らかく光る。
「忘れた?結婚したい人がいるって、俺が言ったこと。」
「忘れてない………けど。」
確かに、長友くんは私に言っていた。
上条さんと別れたばかりの頃、結婚を考えている女の人がいると。
その人と、付き合っている訳ではないと。
そして、昨日、その相手を明かしてくれたのだ。
「俺が結婚したいのは、お前。俺が好きなのは、お前。俺、有沢のことが………好きなんだよ。」
忘れていた訳じゃない。
長友くんにそういう相手がいることは、分かってた。
結婚したいと思うほど、想っている人がいることも知っていた。
でも、その相手が自分だなんて。
まさか私がその相手だなんて、思いもしなかったから。
忘れてはいないけれど、まだいまいち実感がない。
(そっか………。)
長友くんが言っていたのは、私のこと。
ずっと密かに、嫉妬していた相手。
羨ましく思っていた相手。
顔も知らないとばかり思っていた人は、自分だった。
長友くんの想い人。
その存在を気にして、何度も苦しくなった。
純粋な長友くんが、結婚したいとまで思う人。
あの長友くんを、独り占め出来る人。
付き合ってすらいないのに、長友くんの心を掴んで離さない人。
その相手の正体は、私だったんだ。