社内恋愛のススメ
誰が見ても、溜め息が出るほどの美しさ。
同じ女性の私から見たって、本当に綺麗で見とれてしまう。
美しいその人は、上条さんの結婚相手。
私を好きだと言い続けた上条さんが選んだ、妻になる女性。
文香さんだ。
薄いベールの裾には、胸元を飾るレースと同じ物が縫い付けられている。
ベールに隠されて、文香さんの素顔までは見ることが出来ない。
だけど、分かる。
見なくても、分かるよ。
きっと笑ってる。
幸せそうに微笑んでる。
そんな気がするんだ。
(きっと、文香さんは………上条さんのこと、本気で好きなんだね。)
文香さんと、直接話したことはない。
それどころか、私を覚えているかどうかすら怪しい。
上条さんの、たくさんいる部下のうちの1人。
特に目立つ存在でもない私のことを、文香さんは認識すらしていないのだろう。
話したことはないけれど、思うんだ。
この人は、上条さんのことを好きなのだと。
愛しているのだと。
彼女の口から聞かなければ、本当の気持ちは分からないけれど。
だって、そうでしょう?
好きでなければ、結婚なんてしない。
出来ない。
いくら、父親に勧められたとしても。
いくら、優秀な人だったとしても。
そこに気持ちがなかったのなら、この婚姻は成立しない。