社内恋愛のススメ
こうしていれば、離れている今も一緒にいるみたいに思える。
隣に長友くんがいる様に、感じられる。
ほら、長友くんの隣を歩いているみたいに、錯覚出来るから。
いつでも、長友くんのことを感じていたい。
長友くんの存在を感じていたい。
奥の控え室に向かって、歩いていく私。
そんな私に忍び寄る、黒い影。
グイッと、突然横から伸びてきた手にさらわれて、私の体がグラッと傾く。
ヒールを履いている足は、踏ん張る力さえわずか。
バランスを崩す体と、闇に閉ざされる視界。
微かに感じた、誰かの気配。
それは、とても懐かしいもの。
よく知っている人のもの。
「………っ、いた………!」
何が起こったのだろうか。
一体、自分の身に何が起きているのか。
それを知る術は、ない。
暗くなった視界は、何も教えてくれない。
ただ、分かること。
それは、大きな手が私の目を塞いでいることだけだ。
闇に閉ざされた恐怖と。
前の見えない不安と。
それだけで、おかしくなる。
気が狂いそうになる。
得体の知れない何かが、私の心を蝕んでいくのを感じる。
「だ、誰か………、たすけ………っ。」
誰か、助けて。
誰でもいいから、助けて。
その叫びは、最後まで言い終わらないうちに遮られてしまう。
私の言葉を遮ったのは、低い声。
ほんの少し前まで、遠くから目で追っていた人の声だった。