社内恋愛のススメ
長友くんに会うのは、その後になる。
部長に会って、退職願を出して話をもらう。
そうしたら、長友くんに会いに行こう。
全てが決まってから、長友くんに明かそう。
退職願を出すことよりも、そちらの方がずっと気が重い。
長友くんと話すということ。
それは、あのことを伝えるということだから。
長友くんのいない所で、私は別の人に抱かれた。
長友くんの彼女なのに、付き合っている人ではない人と繋がってしまった。
望んでそうなった訳ではないけれど、私と上条さんが体を重ねたことは事実だ。
いくら、私が拒絶していたとしても。
その行為が、無理に行われたものだとしても。
裏切った。
そのことに変わりはない。
長友くんに伝えること。
それは即ち、私達の別れを意味する。
(それでも、伝えなくちゃ………いけないんだ。)
裏切りを隠したまま、付き合いを続けることは出来ない。
私はきっと、思い出す。
思い出してしまう。
長友くんと繋がる度に、上条さんのことを。
犯してしまった、過ちを。
何食わぬ顔をして付き合いを続けられるほど、私は器用な人間ではない。
顔に出る。
態度にだって、出てしまうだろう。
その度に、私は長友くんを傷付けることになるのだ。
別れたくない。
離れたくない。
だけど、決めたから。
もう決めてしまったから。
大好きだから。
長友くんのことが大好きから、嘘をつきたくない。
長友くんにだけは、嘘をつけない。